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第34話 魔王との共同戦線

last update تاريخ النشر: 2026-10-17 21:01:46

第34話 魔王との共同戦線

 翌朝六時前、東京側の共同捜索班は予定より少し早く東側合流点へ到着した。

 神崎蓮が時間を守ったというだけで、高城宗一郎は妙に満足そうな顔をしていたが、本人としては褒められるようなことではないと思っている。九条冬真から「遅れるな」と念を押されたのが腹立たしく、意地でも相手より先に到着してやろうと考えた結果だった。

「結局、九条に言われたから早く来たんだろ」

 車両から装備を下ろしながら高城が言うと、蓮は露骨に嫌そうな顔をした。

「違う。俺はもともと時間を守る人間だから」

「昨日の夜、目覚ましを三回確認してた奴の台詞とは思えんな」

「何で知ってるんだよ」

「宮本から聞いた」

 少し離れたところで荷物を確認していた宮本が、気まずそうにこちらを振り返った。

「別に告げ口したわけじゃないですよ。蓮さんが『六時集合って、本当に六時でいい

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    第35話 父の声 旧研究施設を出た共同捜索班は、日没までに旧山岳地下備蓄庫の北側坑道へ到達することを目標に、山道を急いでいた。 美咲が残した「明日、北側坑道から入る」という一文が、蓮の頭から離れない。その「明日」は今日であり、彼女が予定通りに動いているなら、すでに備蓄庫の近くまで進んでいる可能性が高い。父と母の最後の記録も同じ場所を指している以上、蓮にとっては一分でも惜しかった。 それでも、以前のように一人で先へ走ることはしなかった。 山岳地帯へ入ってから、AIの監視密度は明らかに上がっている。旧研究施設へ向かう途中で人工魔法型と交戦したばかりだというのに、上空では小型偵察機が何度か確認され、冬真側の斥候からは備蓄庫東側に重装型を含む大規模な機械部隊が集まっているという報告も入っていた。 急ぐことと、無茶をすることは違う。 頭では分かっている。 問題は、身体までそれを理解しているかどうかだった。「神崎、少し歩く速度が上がってるぞ」 後ろから高城に言われ、蓮は振り返った。「上げてないけど」「上がってる。最初より前の宮本との距離が縮んでる」 言われて確認すると、確かに先頭を歩く宮本との間隔がいつの間にか狭くなっていた。「……本当だ」「自覚して走るより、無意識のほうが危ない。速度を合わせろ」「分かった」 蓮が素直に歩幅を狭めると、横を歩いていた冬真が淡々と口を挟んだ。「いっそ腰に縄をつけておけば確実なんじゃないか」「犬じゃないんだからやめろよ」「勝手に走らなくなるなら合理的だ」「お前、本当に人を管理するの好きだな」「お前一人の事故防止から国家論へ広げるな」 少し後ろで聞いていた千尋が笑った。

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    第34話 魔王との共同戦線 翌朝六時前、東京側の共同捜索班は予定より少し早く東側合流点へ到着した。 神崎蓮が時間を守ったというだけで、高城宗一郎は妙に満足そうな顔をしていたが、本人としては褒められるようなことではないと思っている。九条冬真から「遅れるな」と念を押されたのが腹立たしく、意地でも相手より先に到着してやろうと考えた結果だった。「結局、九条に言われたから早く来たんだろ」 車両から装備を下ろしながら高城が言うと、蓮は露骨に嫌そうな顔をした。「違う。俺はもともと時間を守る人間だから」「昨日の夜、目覚ましを三回確認してた奴の台詞とは思えんな」「何で知ってるんだよ」「宮本から聞いた」 少し離れたところで荷物を確認していた宮本が、気まずそうにこちらを振り返った。「別に告げ口したわけじゃないですよ。蓮さんが『六時集合って、本当に六時でいいんだよな。五時五十分集合って意味じゃないよな』って何度も確認してたって話しただけで」「それ、ほぼ告げ口じゃん」「家族のことが絡んでるんですから、落ち着かないのは分かりますけどね」 美奈が救急用のバッグを肩へ掛けながら割って入る。「その代わり、今日は勝手に走らないでください。患者になる人を自分で増やされたら困ります」「先生まで母さんみたいなこと言い始めたな」「あなたが子供みたいなことばかりするからです」 そんなやり取りをしているところへ、前方の見張りに出ていた伊藤が戻ってきた。「来ました」 その一言で、空気が少し引き締まった。 東側道路の向こうから十数人の集団が歩いてくる。全員が同じ装備ではなく、銃を持つ者もいれば、弓に似た武器や長柄の武器を背負っている者もいた。その先頭には榊原千尋がおり、少し後ろを九条冬真が歩いている。 通信

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    第31話 機械の魔法使い 東京で最初の人工魔法型が確認されたのは、浄水設備の第二系統がようやく安定運転へ入り、拠点内で「週に一度なら入浴日を作れるかもしれない」という話が出始めた翌朝だった。 その日は珍しく、神崎蓮も朝から少し機嫌が良かった。「本当に風呂、作るんだよな?」 通信施設の簡易食堂で、硬い保存パンをスープへ浸しながら尋ねると、向かいに座っていた天城澪は露骨に嫌そうな顔をした。「まだ決定してない。水量と燃料と排水設備の確認が先。それから、私は給湯器にはならない」「何で先にそれ言うんだよ」「昨日からあなたが三回言ったから」「子供優先なら少しくらい協力しても」「魔力を生活用に使うのが嫌なんじゃなくて、千人分のお湯を私一人で沸かす前提なのが嫌なの。あなたも火魔法を使えるんだから、自分でやればいいでしょう」「俺の火、細かい温度調整苦手なんだよ」「知ってる。だから浴槽を沸騰させる前に練習して」「さすがに人が入ってる時にはやらない」「空の浴槽なら燃やしていいみたいに言わないで」 少し離れた席で食事をしていた高城が、呆れたようにこちらを見た。「朝から風呂の話でよくそれだけ揉められるな」「大事だろ。俺、地球帰ったら最初にやりたかったことの一つが風呂だったんだぞ」「他は」「家族に会う。白いご飯食べる。コンビニ行く。エアコンの効いた部屋で寝る」「ずいぶん庶民的な勇者だな」「元勇者。それに、二十二年も異世界いたら高級料理よりコンビニのおにぎりのほうが恋しくなる時あるんだよ」 澪が少し笑った。「分かる」「お前も?」「私はカップ麺」「大魔法使いが帰還後に食べたいものとしては夢がな

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    第30話 東京に灯りが戻る 東京に灯りが戻った翌朝、神崎蓮は仮設給水所の蛇口の前に立ったまま、しばらく動くことができなかった。 昨日の夜から水が出るようになったことは知っている。自分も奪還作戦に参加し、古い浄水施設のポンプが動き始めたという報告を聞いていたし、技術班が夜通しで配管を繋いでいたのも見ていた。それでも、錆の浮いた蛇口を捻っただけで透明な水が流れ出してくる光景は、蓮が想像していた以上に胸へ響いた。 異世界で二十二年を過ごしてきた蓮にとって、水を得ることは決して当たり前ではなかった。井戸まで何キロも歩かなければならない村もあったし、長い遠征の途中では飲み水を一口ずつ分けたこともある。それでも、地球へ帰ればもうそんな暮らしをしなくていいと、どこかで勝手に思い込んでいた。 帰ってきた地球は、異世界よりずっと水が遠い場所になっていた。「さっきから何を見ているんですか」 後ろから声をかけられて振り向くと、美奈が大きな洗面器と清潔な布を抱えて立っていた。朝から医療区画を回っていたらしく、目の下には薄い隈がある。それでも、以前より顔色は少し良く見えた。「水」「それは見れば分かります」「いや、そうじゃなくてさ。蛇口を捻ったら水が出るって、すごいことだったんだなと思って」「文明が壊れる前に気づいてください」「七年前の俺に言ってくれよ」「七年前のあなたに会ったことありませんから」 美奈は呆れたように言いながら、蓮の肩の傷を確認した。「それより顔を洗ってください。昨日の戦闘からまともに洗っていないでしょう」「水、使っていいの?」「そのために復旧させたんです。もちろん使い放題ではありませんけど、衛生を保つための水まで節約して感染症を増やしたら本末転倒です」「風呂は?」「まだです」「聞く前に断るなよ」

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